2017年04月24日

―マリ農村女性の楽しみー  ザイナブーの旅

 2016年11月29日、久しぶりにバブグ村を訪問しました。
バブグ村はかなりの発展を見せ、診療所からは子供の泣き声が聞こえ、小学校では子どもたちが元気に校庭を飛び回っていました。
カラの宿舎にひとまずくつろぎ、さっそくアワが私の好物の「ヤッサ プーレ(鶏とたまねぎの料理)」を作って、みんなで賑やかなランチ タイムを過ごしました。
 アシスタントスタッフのバジェ ファネはトウグニ地域のモバ村からバイクで約1時間半かけて、私に会うために来てくれていました。バブグ村のアシスタントスタッフにシャカ ジャラも加わったからです。バジェ ファネはアワが一番信頼を置くスタッフです。
私が彼に何か質問しても、口では答えずに首だけで返事をします。きっと恥ずかしいからなのでしょうが、アワは気に入らないようで、すかさず『村上さんが聞いているからチャント口で答えなさい! 2人も子供がいる父親なのに、なんて様か! 口は無いのか!』といささか荒い口調でいい、みんな大笑いです。
 そこにバブグ村産院の助産師のジャラ クリバリーと看護師のギンドウが加わったのですが、この看護師も返事が1拍も2拍も遅れるのです。アワは「これでよく診療が出来るもんだ!」と首をひねっています。しかしバブグ診療所は、カラ開設した産院・診療所9ケ村の中では一番患者数が多く、10月は73人もの患者が来た、と言います。看護師は無口の方が信頼されるのかも知れません。
 それに引き換え女性陣は、助産師のおしゃべりなジャラとアワ、村の女性リーダーのガンガ、さらにカラに集まってきた女性達が加わり、さらに私を加えて大変な賑いでした。どこの世界も女性が元気です。
 しゃべってばかりいないで野菜園を視察しようということになり、みんなでゾロゾロと出掛けました。
1haに満たない野菜園ですが、これから野菜園を囲む金網の柵が建設する予定です。
野菜園の隣には96年にカラが植林地第一号として造成した、村人がケアをする造成林があります。
見事に大きく育ったメリナやニーム、ユーカリは、もったいないので伐採はしないそうです。
野菜園はまだ防護柵が建設されていませんが、一部でタマネギが少しだけ栽培中でした。どうしてたまねぎばかりなの? と聞くと、「栽培が簡単だから」と、返事も簡単です。今はコットンの収穫で忙しいので、それが終わったらトマト・キャベツ・ナスなども栽培する、ということでした。
 夕飯にはミレットの「トー」を作ってくれました。懐中電灯だけの灯りの下での夕食も、満天の星に助けられ、不便さもなくにぎやかです。何といっても未だにアワの先日の日本での話で盛り上がります。アワは人まねが上手く、出会った日本人の真似をしてみんなを笑わせています。本当に楽しかったようです。村の人に会うと「アワの日本への旅をありがとう」とお礼を言われます。日本では、あまりないことです。

 夕食後に胸を打つ話を聞きました。それは、アワがモバ村滞在中に雇っていた少女の話です。
名前をザイナブーといい、彼女は14歳から働いていました。村の習慣で、既に親の決めた許嫁がカニカ村にいました。嫁入り道具を揃える為や、花嫁修業もあってのお手伝いさんでした。
アワがバブグ村に来る前に嫁に行くので退職してたのですが、そのザイナブーがアワを訪ねてバブグ村まで来たというのです。背中には1歳に満たない赤ん坊をおぶって、頭にみやげを乗せテクテクと2日がかりの徒歩の旅でした。
旅立つ前に彼女の村から片道10kmもあるモバ村まで行き、電話を持っている友人にアワへの連絡を頼んだそうです。夫に許しを貰っての旅です。
 旅の初日はカニカ村から18kmのオロコロジー村まで歩きます。その夜は村の親戚に泊めてもらい、2日目にバブグ村を目指して、メンコロブグー、ドゴニ、ファニ村を経て24kmの道を歩いて到着したのです。
お店もなく、水も途中にある家で貰って飲みながらの旅です。きっと「アワに会いたい」と思う一念だったのでしょう。
そしてアワに、少しだけど・・と言って、本当に少しずつのティガニクル(豆の一種)、ササゲ豆とトウジンヒエをおみやげに差し出したそうです。
文字の読み書きもできない彼女なので、バブグへの道もよく知らないと推測されます。それでも途中で行き会う人にバブグ村への道を訪ね、到着したそうです。彼女の心情を想像すると、言葉では言い尽くせない感激を覚え、涙が出る思いでした。

 バブグ村での1週間の滞在は、満足の行くものだったのでしょう。毎日仕事のあるアワを助け、一緒に食事をして、一緒に笑い過ごした日々だったということです。
帰路もまた行き同様に2日かけてカニカ村へ帰って行ったそうです。約10日間の旅を許してくれた夫もキット理解ある優しい人なのでしょう。
苦労しても訪ねてくる人がいるアワ、苦労してでも会いたいと思う人を持っているザイナブー、何とも幸せな話ではないでしょうか。

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子供に離乳食を与えているザイナブー
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2013年09月30日

カラの現地から 2013/9/30

 2013年の雨季の状況についてマリの現地スタッフから久々の報告がありました。
雨季は集中的な降雨があり、バマコ市内の連日の停電で連絡が不可能だった為です。

 カラの活動地域ではアチラコチラの村の識字教室や、村民の住宅が崩壊してしまったということです。
住宅はすべて土レンガの建設で鉄筋が入っていませんから、強い風と雨で崩壊してしまうのです。
昨年一昨年、そして今年もカラのコニナ村の宿舎の一部が崩壊しました。

子供5人をかかえるスマイラ家族は、一昨年の豪雨でコニナ村宿舎に住むことが出来なくなり、カラも資金不足で修理できず、残った一部の部屋にスマイラが住み、子供たちと奥さんはクリコロ町の親戚の家へ引っ越しました。
ケイタとアワ夫婦の住むモバ村の宿舎ではトイレが壊れただけでしたが、ケイタは「強い風を非常に怖がり、コーランを唱え一晩中眠ることが出来なかった」と、アワが笑っていました。ケイタは非常に慎重(怖がり)で珍しい食べ物も口にしません。今年の雨季の総降雨量は、400mm前後と、そう多くはないのでが、このように8/14の一晩で145mmも集中的に降ったり、大きな被害が出たということでした。
カラが過去に建設した識字教室は、壁面に針金を張り巡らせてありませんので、北東の壁面やトタンの屋根が飛んでしまいました。日本でも大風による多くの被害が出ましたが、日本のように直ぐに補修できない経済的状況でもあり、雨上がりの寒さで老人や子供たちが病気にならないことを祈っています。

今年はバマコ周辺で1000棟の家屋の崩壊と40人の命が失われています。
毎年降雨量が心配されていますが、多くても少なくても問題は発生し、作物も多くの被害を受けているようです。
今年もこのような天候だったために、食料不足をきたし、青年の出稼ぎも多くなるでしょう。
 雨季の間は村間の道路が決壊してしまい行き来が出来なくなり、セイドウはバマコ事務所から村へ行くのにも大変です。非常に遠回りをして、いつもの3倍時間がかかるということです。建物は通常トイレは外にあり屋根が付いていないため、トイレに行くのも難しいです。

 今進行中のJICA支援事業の識字教師の育成研修会、特にフランス語コースは、農繁期(7月から9月)には基本的に休みですが、6月終了時に学習内容が小学校4年生まで進み、だんだん難しくなってきたので、研修生の希望もあり復習の意味で7月に特別研修を行ないました。
 公用語のフランス語を読めて書けることは、職業に就く時にとても有利です。研修生は、熱心で研修会への出席を大事にしていますが、出稼ぎに行かざるを得ない人もいて、出席率は70〜80%です。
しかし3ケ月ごとの試験の結果を見ますと、成績に地域差がはっきり出ています。一番成績の優秀な地域はバブグ村の研修会です。成績が芳しくないのは、当然中央からはるか遠く離れたヌムブグー村の研修会です。
これは未だ小学校も無く、識字教室だけの地域ですから仕方がありません。
フランス語のコース研修生であるにも関わらず、バンバラ語のコースにも自主的に出席している女性もいます。勉強したいと願っている人が多いのに、それを満たすような環境が整っていないのは不幸な事です。
いわゆる、内に秘めた才能をもっともっと引き出して活用するよう仕向けることが、地域開発への早道かも知れません。しかし、問題もあります。出稼ぎ者が多く欠席者が出ることは仕方のないことですが、女性研修生が悠々と遅刻してくるのです。
スマイラは何度も注意しますが、依然として改まりません。送れて教室に入ってくるときも「スイマセン」と謝ることなどなく、とても堂々としているのです。日本人と意識が違うのでしょう。
このような態度は何年現地で働いていても、慣れることはなくストレスとして残ります。

 ついで、マリ大統領選挙が8月に無事意終了したことをお伝えします。有権者数は6,829,696人、投票率は51.54%でした。
イブラヒム ブバカリ ケイタ氏が今後5年間のマリ新大統領になり、9月4日に就任式がありました。
そして翌5日には、オマール タタン リー氏首相に就任しました。国民は新政府体制が整うのを期待しているということです。

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大雨で崩壊した識字教室

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トウジンヒエの畑と迫り来る雷雨

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モバ村への豪雨の道

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雷雨とカリテの実を採る女性

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トウグ村の街道が崩壊しハスが開花しました。
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2012年02月28日

マリからのご報告とご挨拶

マリからのご報告とご挨拶 2012年1月

 カラの会員の皆さま、そしてご支援くださる皆さまへ。
新年明けましておめでとうございます。
昨年中は多くのご支援やあたたかいお励ましのことばを頂戴いたしましてありがとうございました。
本年も宜しく願い申しあげますとともに、みなさまのご多幸と健康をお祈りいたします。
 さて、12月8日のヤマハホールでのコンサートを無事終え18日にマリ活動現地へ参りました。
日本の気温と比較になりませんが、予想に反してこちらの今年の冬はカナリの寒さです。夕方から焚き火で暖を取るような状況です。
冴え冴えとした夜空にちりばめられた星が美しく輝いています。明け方は南十字星を見ることが出来ます。
 今年のトウジンヒエ、トウモロコシ、ゴマ、ササゲ等の収穫は非常に悪く、ネリカ米は当地域では全滅でした、これに反して良好なのはコットンだけでした。
1月現在、未だ収穫は完全に終了していませんが、村によっては、コットンの計量が行われています。
 2011年10月から始まったカラの新事業も順調に進んでおります。
スウバ村診療所の建設が始まりました。4月中旬の完成を予定し、2012年4月29日に落成式の予定ですがこの日はマリの大統領選挙の日で変更する必要があるようです。(写真上)
識字教師研修会では初級クラスは1月1日も休まないで研修をしております。
上級のフランス語コースは基本的に土・日曜日だけのコースです。
両コースともカラが参加の許可を出している人だけの研修会ですが、非常に人々に受け入れられ、ボランティアとして両コースに参加している人もいるほどです。 そして3月末には識字教室が10カ村へ建設されます。
学校の全く無い、子供が非常に多いソモノダガ村へ先日行って来ました。
コニナ村から13kmニジェール河畔に行き、景色がとても美しい村でした。村では全員が字を読めなく書けないそうです。識字教室の建設に期待を寄せ、教師も初級コースで識字教師になる研修中です。
 顔をドロだらけにした子供たちがニジェール河で魚とりをしていました。河が増水すると家の近くまで水がくる村です。(写真下)
 助産師3人の育成中です、彼女たちは2012年12月に研修を終えてそれぞれの村へ帰ります。その頃は皆さまのご協力で3カ村に産院が完成している予定です。なんとも嬉しい年になりそうです。
本年も折にふれHP上でもご報告いたします。
(文責  村上 一枝)

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2012年02月24日

マリ現地活動報告

@ヌムブグー助産院が開設されました
 村の女性たちの念願であった産院が、ヌムブグー村にJICAの資金で建設され、4月後半から開設されました。
 ここで働く助産師も村出身です。優秀な女性を発掘して才能を引き出すこともカラの役目です。
 助産師育成と産院の建設はJICA資金です。しかし村の人たちの強い希望で、看護師1人をバマコ市から雇用して一般診療科も始めました。この看護師の給料、診療に必要な薬剤、器材等は全て村が支払います。

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Aサヘル地域女性による衛生改善事業
 平成20年10月にスタートした【サヘル地域女性による衛生改善事業】は、村の女性たちが主体となって出産時の事故や多発する感染症を防ぎ、健全な生活を築き上げるのが目的です。
 その手段にトウグニ・コミュン31カ村の各村から選ばれた5人の女性(K会、合計155人)がカラ主催の研修会で学びました。
 この研修会は雨季を避け2.5年間に順次行われ、平成23年3月末に全ての村の「K会」の研修は終了しました。
 13日間の研修会では衛生と病気の関係、病気予防、出産、母子衛生、子供栄養、その他多くの日常生活に関わることを学びました。
 文字を知らない女性たちは、聞いて覚える授業ですから大変でした。しかし23年4月からこの「K会」が村で人々に学習会、清掃、汚水・汚物槽の掘削、予防接種の徹底、等多くを実施しています。

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B【森林パトロール隊】発足

 平成18年乾季にスタートしたカラの【森林パトロール隊】と同様な活動が、マリ政府レベルで行われるようになりました。
 これは、今までマリの治水森林局が自然保護の事業として進めている方法で成果が見られないので、カラ活動地域の治水森林局の役人がカラの活動を説明したことが起点になったということです。
 ※カラの【森林パトロール隊】:トウグニ・コミュン31カ村の各村から選ばれた5人が自村の森林火災、過剰伐採、盗伐を防ぎ自然環境を護ることを目的とした自衛の村人によるグループです。

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