チョット遅くなりませたが、先回(2011年12月→2012年3月)の渡航時に少し驚いたことがありました。
それは、昨年カラの現地を視察した方のご好意で建設されることになった、3カ村への産院の建設に関することです。
私がコニナ村に滞在中、スタッフが「3カ村に行って産院建設について説明をしてくれ」と言うのです。
今までこのようなことはなく、全てをスタッフのスマイラとケイタに任せて何の問題も無く過ごしてきました。
3カ村の筆頭に、キバ村(時としてキバン村と言われますが)を訪問しました。
5年前にカラが建設した識字教室に村長、長老、青年グループ代表そして女性グループ総計38人が部屋一杯に集まり説明会を開きました。
はじめに儀式的な長々とした時候の挨拶・家族一同の状況を尋ねることなど等の挨拶の後、本題の産院建設について私がフランス語で、横に並ぶアワがそれをバンバラ語に通訳して始めました。
スタッフ間の立場は、この村はケイタのテリトリーですので彼が仕切るのが通常ですが、保健、女性の仕事に関しては全てをアワが仕切っています。
私は、産院の開設について、産院建設の理由、カラが負担する事項(助産師育成費用と産院の建設資材の提供、建設技術者の派遣)、次いでこれに関する村側(人)の負担すべき事項について話しました。
そして、産院開設後は全て村の責任で運営管理すること、その為に村で委員会を設立し助産師の給料や以後の薬剤の購入についてもすべて村が配慮することです。
この事業は既に2011年の春に(助産師育成が始まる前)村民会議で説明し、村から納得と了解を得てからのスタートした事業です。
しかし、今回の私の説明が進むうちに緊急動議的な問題がありました。
それは村側、村長から「建設の土台となる土レンガを製造する職人が現在多忙である、そこを無理して頼むのだから、カラがその労務費を支払ってくれ」と言うのです。
私は「カラは建設や助産師育成に800万セーファーフラン(約130万円)も村のために使用しているので、その要請は聞けない、多額の資金をかけてキバ村の人たちを支援している、更に要求するとは何事か、このカラの支援に対して村はどのように答えるか?もし納得できないならばこれ以上の資金は出せないから事業は中止にする、産院を欲しい村は沢山ある」と答えました。
そうしたら村長が「5分待ってくれ、今相談するから」と言い、数人の男性と外に出て行きました。
数分もたたない内に戻ってきて、「分かった、カラの言うとおりにするから建設をしてくれ」と言うことになりました。
村長と数人が外に出て相談している間、多くの若者と女性グループが部屋に残っていましたが、彼らの考えは村長達の考えに反対でした。
特に女性たちは「村長の考えは良くない、自分たちで使うものだから自分たちも協力しなければいけない」と、はっきり口に出して言っていました。
なぜにこのような言葉が村長から出たのかと言うと、【土レンガ製造に携わる人へ労務費が出ているはずである、しかし村にいるカラの現地スタッフのアワやケイタがネコババして村へ渡してくれないのだろう】という邪推があり、現地スタッフの説明では信用してくれないと言い、スタッフたちは怒っているのです。
その為に予定では既に終了しているはずの土レンガ製造がまだ始まっていなかったのです。
私の20年過ぎた経験でも、はじめて聞いたことでした。
このキバ村での説明後、その足で4km離れたママブグー村へ同様な説明に行きました。
そうしたら、またこの村でもカラスタッフ間と村人との間に問題が起きていました。
ママブグー村での問題は、「土レンガ製造ではなくセメントレンガの製造にしてくれ」と言う内容です。
理由は「セメントレンガは土レンガよりも清潔だから」と言うのです。
しかしこれが本当の理由ではないのです。真の理由は一部のキバ村人と同様に、日本からはきっとセメントレンガ製造の費用が来ているのに、現地スタッフがそれをネコババして、費用のかからない土レンガを製造させているのではないか?という、これも邪推です。
よく話し合って説明を終えました。
もう1カ所のコニナブグー村では、カラが以前に指示した通りに建設準備を進めていましたから問題はありませんでした。
その後宿舎へ帰り、食事をしながらスタッフは部族が違うといえ同じマリ人、同じ国民でありながら、彼らとの付き合いは非常に難しく、身に覚えの無い誤解を受けて怒り心頭でした。
3カ村を廻って3カ村の顔を見てきました。でも一昨年産院を建設したヌムブグ村でも同様な問題があったということでした。
村人はやはりセメントレンガの費用で土レンガを作らせているとスタッフたちを誤解していたと言うのです。
しかしそこへ、ある日私が行き、土レンガやそれを使用しての建設を写真に写しているので、「これは正しかった」という風に誤解が解けたそうです。
長い間マリにいても、なかなか外国人の私たちの耳に入ってくることは多くはありません。
特に、何か支援すると「うれしい」「ありがたい」と言う言葉を言ってくれます。
確かにこれも真実でしょうが、その裏に隠されたことも知ることも必要ではないでしょうか?
そうではないと適切な支援にならない様に思います。
次回は、十数年前に実際に経験したことをお話いたします。 (分責:村上)

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